実在の出来事を、虚飾を交えることなく記録/再構成した映像—。
辞書は「ドキュメンタリー」をこのように定義している。
『実在の出来事』『再構成』に異論はない。
しかし『虚飾を交えることなく記録』はいかがなものか。
ドキュメンタリーは、記録ではなく作品である(と思いたい)。
現実の事象、実在の人物を題材に扱うものなら、手法の如何は問われないはずだ。
大切なのは、伝わるべきが、伝わること。
さらに重要なことは、いかに観る者を惹きつける魅力に溢れているか。
ドキュメンタリーは劇映画に比べ三倍面白くないと通用しない。
監督・原一男は言った。
映画のジャンルにおいてはマイノリティな存在、という自覚があるのだろうか。
ゆえに、「ゆきゆきて、神軍」は誕生しえたのか。
なんなんだ、この映画の尋常ならざる振り切れ具合は。
劇映画の三十倍、いや三千倍は面白いではないか。
辞書が言う「虚飾」がNGなら、
奥崎謙三がカメラを前に自ら演じて見せた、
あの強烈なパフォーマンスはどうなる?
要は、そこに演出が入ろうが、ありのままを写そうが、
映像を切り取り編集し形になったものに力があれば、何でも良いのだ。
本書は、当編集部が独断と偏見で「傑作」と見なした88本のドキュメンタリーを
作品に関係の深いクリエイター、パフォーマー、文筆家が
個人的な視点で論じた1冊である。
今村昌平を敬愛する園子温が「人間蒸発」を、
想田和弘『観察映画』にゾッコンな宇多丸が「精神」を
その想田監督はドキュメンタリー生涯ベストワンの「アトミック・カフェ」を、
久保ミツロウは自作「モテキ」誕生のキッカケを得た「童貞。をプロデュース」を。
脚本家の木皿泉は、同じく夫婦共同脚本家であった市川崑&和田夏十の愛を描いた
岩井俊二監督の傑作「市川崑物語」に思いを寄せた。
ナチのプロパガンダ映画「意思の勝利」を語った18才の女優・二階堂ふみから
「TOKKO」を執筆した戦争を知る82才の映画評論家・佐藤忠男まで
その数、総勢73人。
中には、映画の内容にはほとんど触れず、
作品をダシに自身の人生のみを語った文章もあるが、それもまた望むところ。
繰り返す。まずは面白くなければ人には伝わらない。
そして最大級の自信も持って言おう。本書に載った全てのドキュメンタリー、
観ずに死ねるか!
★CONTENTSの詳細はmizushinedocu.comを参照ください
- 単行本: 256ページ
- 出版社: 鉄人社 (2013/3/29)
- 言語: 日本語
- ISBN-10: 4904676726
- ISBN-13: 978-4904676721
- 発売日: 2013/3/29
- 商品パッケージの寸法: 21 x 15 x 2.4 cm