著 最東対地
その町は、地図にはある。誰の記憶にもない。
2013年春。西川梨恵は、妹の娘・花菜を預かることになった。震災で父を失い、避難先を転々とするうちに口を閉ざしてしまった小学生の姪。ふたりが移り住んだのは、新今宮から西成へ向かう途中にある府営住宅「さつき町」だった。
住人は老人と子供しかいない。市内でここだけが、いつも雨に濡れている。
転校初日、花菜は同級生から二つの約束を告げられる。
ひとりでトイレに行かないこと。
雨の日は外に出ないこと。
破れば「あおむし」が来る——。その日、花菜はひとりでトイレへ行った。
姪は見えない友達と話しはじめ、芋虫の絵を描き、どこで覚えたのか『軍艦マーチ』を口ずさむようになる。そしてもう一つ、この町には大人にだけ課された禁忌があった。
あの歌を、歌ってはならない。
つられて口ずさんだ恋人が消えた。後輩が消えた。町の元住人・アンジーは、十数年前に息子を失ったまま探し続けていた。手がかりを追ううち、梨恵は理解する。この町で起きていることには、はるかに古い出処がある——。
- 発売日 : 2026/9/29
- 言語 : 日本語
- 本の長さ : 320ページ
- ISBN-10 : 4865373349
- ISBN-13 : 978-4865373349
- 商品の重量 : 281 g
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 1.9 cm

